「かもめ食堂」という映画を知っていますか?小林聡美主演で2006年3月に公開されれた本作は、フィンランドを舞台に日本食の食堂を営む小林聡美演じる店主と、そこに集う少し風変わりなお客さんたちとの交流を描いた映画です。(ちなみに舞台になった食堂はラヴィントラ カモメという名前で今も日本人の観光スポットになっているそう。)
ひょんなきっかけで食堂を訪れたのは、両親の介護を終えてフィンランドに旅行に来たという、もたいまさこ演じるマサコ。そして、あるきっかけから目をつむって世界地図を指したところに行ってやると決心したという、片桐はいり演じるミドリもやってきます。
ふたりに共通しているのは、現実のしんどいことをお休みして遠くへ来たこと。ふたりは食堂を手伝うことになるのですが、店の中で給仕をしたりシナモンロールを焼いたりと淡々とした日常を送りながら、現実ではありえない少し不思議な出来事が起こっていきます。
そもそもマサコが店を訪れたきっかけは空港で荷物を紛失したからなのですが、荷物が見つかってフィンランドを離れようと思ったそのとき、港で知らない人から急に犬を手渡されます。生き物を手渡されてしまったマサコは、かもめ食堂に留まることにするのですが、こうして文章で書いてみると「なんだそりゃ?」という展開ですよね。
でも、そんなありえない偶然を、なんとなく必然と感じさせてしまうのが、もたいまさこなんです。うん、そうだね、あり得るよね、と特に理屈もないのに、あり得るような気がしてくるのです。
食堂を訪れたフィンランド人の女性の話を、涙ながらに聞いてあげるシーンがあるのですが小林聡美の「フィンランド語話せるの?」という問いに「いいえ」ときっぱり答えるまさこ。でも確かにもたいまさこだったら、フィンランドが解ってしまうのかもしれない。そう納得させられてしまう不思議な役者さんです。
物語は淡々と進んでいきますが、かもめ食堂を中心に少し不思議な事件が起こるロードムービーになっています。土曜日の昼下がり、マサコとミドリのように頭の中を日常からシャットダウンして、もたいまさこにいざなわれて非現実な夢の世界にトリップしてみませんか?