仕事をするって、こういうことなのかもしれない。働く女性にそういう感想をもたらしてくれる映画、それが「ファッションが教えてくれること」です。
アメリカ女性の約10人に1人、約1300万人が読んでいるというファッション誌「VOGUE」。“VOGUEは彼女の雑誌”と言われるほど絶大な権力と影響力を以って、誌面を仕切るのが編集長のアナ・ウィンターで、「プラダを着た悪魔」とのモデルだと言われています(プラダを着た悪魔の執筆者は否定していますが、彼女はアナ・ウィンターの元部下なのです)。この映画は、「VOGUE」の特別号の創刊までの内幕を描いたドキュメンタリーになっているのですが、ファッション界の内幕というよりはむしろ、利害関係者がたくさん集まって仕事をするにはどうしたら良いかという“仕事”を描いた映画に見えます。
「VOGUE」の編集長の仕事なんて、参考にならない。やっていることのレベルが違う。と思ったそこのあなた。会社でせっかく提案して通った企画が、他部署や権力者からの横やりでどんどん違うものに改変されていったことはありませんか?自分が良いと思って提案しているのに、上司からOKが出ずに悔しい想いをしたことはありませんか?
この映画にはそういう仕事の現場における生々しいリアルがたくさん出てくるんです。
たとえば映画に登場するベテランのエディターは、ソフトでアートな世界観を好みます。自分の好きな世界観の企画を編集長のアナに提案しますが、却下され続けてしまいます。特集号のページの多くは、女優シエナ・ミラーに割かれることになり、エディターは誌面の構成を見て「シエナばっかり。22ページも」と落胆してつぶやきます。
さらに、編集長として君臨しているはずのアナとて例外ではありません。特集号の看板企画であるシエナ・ミラーの撮影を著名カメラマンに依頼しますが、カメラマンの独断で予定通りの撮影をしないなどのハプニングが起こり、表紙に使える写真がなくなってしまうのです。
結局は別々に撮られた写真を合成することで、表紙に使える写真をねん出するのですが、「VOGUE」の編集長として君臨するアナでさえ、言うことを聞かないカメラマンにやきもきさせられるのです。
ファッションショーのランウェイの最前列には常にアナ・ウィンターが。隣にいるのは「セックス・アンド・ザ・シティ」のサラ・ジェシカ・パーカー
女性であれば、だれもが憧れる雑誌「VOGUE」のベテランエディターや編集長でさえ、日々の仕事のトラブルや職場の人間関係に悩まされています。
毎日起こる仕事や人間関係のアレコレをいかに機転を利かせて切り抜けるか。この映画は、働く女性にそんなことを提示しているように思えます。