ジム・ジャームッシュという監督を知っていますか?いつもちょっとヘンテコというか、シュールな映画を撮ることに定評がある監督さんです。そんな監督が手掛けた、どのストーリーにも必ずコーヒーと煙草が登場する11本のショートムービーが「コーヒー&シガレッツ」です。
「コーヒー&シガレッツ」に登場するエピソードも、やはり何かがヘンテコ。例えば一人で雑誌を読みながらコーヒーを飲む美しい女性が登場するエピソード。その女性のカップにコーヒーを注ごうとウエイターが何度もやってきます。そのたびにおかわりを断る女性。ただ、その繰り返しなんです。それでも、だんだんウエイターと女性のやりとりを見ていると、ウエイターのシュールな佇まいにくすくすと笑いが出てくる。ジム・ジャームッシュ監督は、そのような感じで人の心のこそばゆいところをくすぐるのが上手なのです。
さらに、監督は交友関係の広さでも有名なので、本作にはケイト・ブランシェットをはじめとするスターが多数登場しています。個性派俳優が登場するエピソードの中でもとりわけ秀逸だったのが、俳優ビル・マーレイが登場する話。このビル・マーレイという俳優さんも監督と同じく人の心のをこそばゆくする天才で、ビル・マーレイさんの演技を見ていると、なんか心のひだがむずむずする感じになるのです。
昔は「ゴースト・バスターズ」といったザ・ハリウッドな映画にも出演していていましたが、今では作品を選んで自分の好みの映画にだけ出演しているのだそう。
このビル・マーレイが、逃亡中のビル・マーレイ本人役としてウエイターで出てくるのですが、やっぱりこのシーンにもくすくすと笑ってしまう、シュールなおかしみを感じます。
ちなみにハリウッドの俳優たちは、普通はエージェントをつけて映画出演などの窓口を置いていますが、ビル・マーレイさんはエージェントがいないのです。誰も連絡先を知らないため、友達でないとビル・マーレイさんに出演依頼をすること自体ができません。
ジム・ジャームッシュ監督が本作の出演依頼をしたとき、撮影前日に時間と場所だけ教えてくれと言われたので概要を留守電に吹き込んだものの、撮影の当日は本当に本人が現れるのか疑心暗鬼だったとか。
本作はビル・マーレイさんをはじめとする。監督好みの個性派な面々を集めたといいます。土曜日の昼下がり、コーヒーを片手にシュールな11本のショートストーリーで非日常へトリップしてみてはいかが?
コーヒー&シガレッツ [DVD]
ケイト・ブランシェット (出演), ロベルト・ベニーニ (出演), ジム・ジャームッシュ (監督)